雛絵「はあ、まったく。こういうことのために呼び出されるの、迷惑なんですけど」
澪「こういうこと? なんの話だ」
雛絵「さっき、宮代先輩相手にやらされたことですよ。相手の嘘を見抜くっていう私の能力を、便利に使おうとしないでくれませんか。何度も言いますけど、巻き込まれたくないんです」
澪「無意味な訴えだ。お前は『ニュージェネの狂気の再来』を起こしている犯人から、すでに目を付けられているんだよ。あのラブホで一度、見逃されているが、犯人に顔は見られてるのは確実なんだからな」
雛絵「むぅ……。そうやって人を追い詰めて楽しいですか」
澪「それなりにな」
雛絵「あなたってそもそも、なにが目的で警察に協力してるんです?」
澪「お前に答える義理はない」
雛絵「じゃあ、こっちから質問しますから、それに答えてもらうのはどうです?」
澪「さっき宮代にやったようなことを、私にもやるつもりか?」
雛絵「人を一方的に利用してるんですから、これぐらいいいじゃないですか。それに、お互いに情報を提供するっていう約束でしょ。私も提供される権利はありますよ」
澪「口だけは達者だな」
雛絵「それとも、なにか知られて不都合なことでもあるんですか?」
澪「そうだな、お前を含めたギガロマニアックスを憎んでいることぐらいだな」
雛絵「皮肉ですか……。普段から言いまくりじゃないですか。態度だって見え見えだし」
澪「そうか。だったらお前に知られて困るようなことはなにもないな。好きにしろ」
雛絵「おっ、言いましたね? それじゃ遠慮なく。そんな態度でいられるのも今のうちですよ? ありとあらゆる手段で恥ずかしい思いをさせて――」
澪「なにをブツブツ言っている?」
雛絵「いえいえ。なんでもありません。ゴホン。じゃあ今から言う質問に、すべて『いいえ』で答えてください」
澪「いいえ」
雛絵「まだ始めてませんよ……」
澪「フッ……」
雛絵「ええと、それじゃあ……『周りの人間はみんなバカだと思っている』」
澪「いいえ」
雛絵「ははぁ、なるほどなるほど。まあ、そうでしょうねえ。分かりやすい」
澪「…………」
雛絵「『でも、本当はその輪の中に入りたいと思っている』」
澪「いいえ」
雛絵「ふーん。そこは宮代先輩とは違うんだ」
澪「あんなヤツと一緒にするな」
雛絵「『警察に協力してやっているが警察もバカだと思っている』」
澪「いいえ」
雛絵「ふふっ、後で神成さんにチクっておきます」
澪「勝手にしろ」
雛絵「『実は将来は警察に入りたいと思っている』」
澪「いいえ」
雛絵「でしょうね~。『科捜研の某ドラマにちょっぴり憧れている』」
澪「いいえ」
雛絵「『実は科捜研の某ドラマを欠かさず見ている』」
澪「そんなことを聞いてなにになるんだ?」
雛絵「『いいえ』で答えてください」
澪「いいえ」
雛絵「『実はこっそり白衣を着ている自分がオシャレだと思っている』」
澪「いいえ」
雛絵「『オシャレとは思わないが、かっこいいとは思っている』」
澪「……いいえ」
雛絵「ほう。思ってるんですね」
澪「いいえ、と言っただろう!」
雛絵「はいはい。ムキにならないで。『自分は中二病だと思っている』」
澪「中二病? なんだそれは。いいえ」
雛絵「『白衣の裾をバサァッとしたくなるときがある』」
澪「いいえ」
雛絵「『変なポーズを決めたくなるときがある』」
澪「いいえ」
雛絵「『高笑いをしたくなるときがある』」
澪「いいえ」
雛絵「『白衣を着ているときに一番かっこいいと思うポーズは、ポケットに両手を突っ込んでいる状態だ』」
澪「い、いいえ」
雛絵「ふーん、ふふふ」
澪「……さっさと次に行け」
雛絵「じゃあ……『付き合っている恋人がいる』」
澪「はあ?」
雛絵「『付き合っている恋人がいる』」
澪「なぜそんな下らないことを――」
雛絵「『付き合っている恋人がいる』」
澪「いいえ!」
雛絵「『過去にはいた』」
澪「貴様……」
雛絵「答えてください。『過去に恋人はいた』」
澪「いいえ!」
雛絵「『ヴァージンですか?』」
澪「当たり前だろう! ……あ」
雛絵「『いいえ』で答えてくださいよ」
澪「…………」
雛絵「久野里さん? ねえねえ、どうなんですかぁ? く・の・さ・と・さぁん?」
澪「…………………………いいえ」
雛絵「質問は以上です」
澪「くっ……」
雛絵「それじゃ私、帰りますね。今日はとても貴重な情報をありがとうございました。あでぃおすぐらっしあー♪」
澪「…………いつか殺す。ギガロマニアックスは全員、脳に電極を突き刺して……いつか殺す!」